平常心?   June 03, 2006

 内弟子の頃よく耳にした言葉の一つが『平常心』ですが、そうなろうと思ってもなかなかなれるものではありませんでした。僕の経験では、むしろそうなろうと思えば思うほど緊張して平常心から遠のいてしまったような…。そして、平常心とは『様々な体験の積み重ねによって養われていくのでは?』との思いに至りました。

 シカゴで大変お世話になり、今はSan Franciscoで開教使の総長としてご活躍されている小杭先生から日頃「体験に良し悪しはない、初めは運が悪かったとか損をしたと思うような事でも、後々良かったと思えたり、得に転ずる事がある。体験とは、そうやって自分自身を成長させてくれるもの!」と聞かさていました。また、大山倍達総裁も「君たち、そこにある粉が甘いか辛いかは舐めた者だけが分かるんだから体験を恐れちゃだめだよ!」と内弟子の朝礼で話されていました。私が思うにどんな事であれ、それまで経験のない状況に直面した時、ヒトはとてつもなく臆病になり冷や汗たらたらで「平常心」でいられないのでは? 僕自身、JFKに降り立ったときから日々緊張の中でアメリカ生活を過ごしました。一つ一つ思い出せば限がありませんが、特に日本で生まれ育った僕は周りの目を必要以上に気にしながら人と違うことをしてはいけないという考えが自然と心のどこかにあったように思います。 しかし、米国での生活を通して世界には色々な考えを持った人がいる事を知り、自分と意見の違う人たちをも「なるほどなぁ〜、おもしろいぞ!」と興味を持って接するようになれたことは、とても大きな成果だったと感じています。 
 さて、9.11 (同時多発テロ) を僕はJALChicago officepassenger serviceの仕事をしていた関係でとても身近に感じショックでした。 思い起こせば成田からの便があと30分程で到着予定の時で、たまたま僕がその到着便の担当のため、色々な用意で忙しくしているところへ、その日は休みだった社員から「テレビをつけてみて、NYCで大変なことが起こっているよ?」との電話が入り、その画面にはもくもくと煙を上げるWorld Trade Centerが映し出されていました。ただ、それがテロによるものだとは直ぐには分からず、しばらく経ってからオヘア空港を利用するすべての航空会社のStation manager が集められ『同時多発テロが起きた為、米国のair spaceFAA(連邦航空局)からU.S Air Force(米国空軍)の管理下に移り、全米の空港はすべて閉鎖になる』旨の説明がありました。その指示を受けた我々は、かつてない戸惑いと「これからどうなるんだろ?」という大きな不安で異様な空気に包まれましたが、周辺は着々と警備が強化されていきました。まだその時点では、何機がハイジャックされているか把握されておらず、次はChicagoが狙われているという憶測が出回っていたこともあり厳戒態勢でした。

  因みに、成田からのシカゴ便搭乗者は大多数がシカゴから国内線に乗り継いで他の都市へ行くビジネスマンが多くシカゴが最終目的地の人は殆どいません。さぁ予定が狂って大変です。こんな予期せぬアクシデントが起こったとき色々な人間模様が見られます。航空会社の人間に予定が狂ったことを怒鳴り散らす人(多くの日本人はこの部類でした)今何が起こっているか冷静に判断し対処する人、ただただ慌てふためきわれ先と係員に詰め寄る人と。同じ状況の中にあっても人それぞれ違う反応を示し不思議です。() そうこうしているうちに成田からJFKに向かう予定の便もシカゴにdivert(目的地変更)してきました。その搭乗者の中には日頃テレビに出て偉そうな事を言っている大学教授や評論家がいましたが、そういう輩に限ってこのような緊急事態に自分自身では何も出来ず係員に無理難題をふきかける癖の悪い人たちでした。 そんな中で名前は定かでありませんが、ドラマによく出ていた中年俳優で静かに係員の指示に従い、約45日後に日本に向けてやっと帰ることができるようになったときには「大変な中、色々お世話になりありがとうございました。まだまだ大変とは思いますが、がんばって下さい」と心和む言葉を残して機上の人になった方もいらっしゃいました。 さてさて、僕自身がこのような状況に直面したとき平常心でいられるだろうか? 自問してみました。    押忍

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