アラバマでの思い出/Memories in Alabama      September 26, 2006

 三浦師範の内弟子になって丸3年を迎えた夏、アラバマ州バーミングァムにある大山泰彦師範の道場に1ヶ月程行くように命ぜられましたが、既にシカゴでの生活に慣れたとえ1ヶ月とはいえども行くのが不安でした。 稽古が厳しい上に雑用も多いとの噂を耳にしていて、とてもネガティブな気持ちで一杯でした。 ただ、自分の気持ちがどうであれ『NO!』とは口が裂けても言えず覚悟を決めての出発となりました。

  バーミングァムの空港に着くと大山師範の内弟子が南部の州らしくpick-up trackで迎えに来てくれていました。 空港から道場までの道のり、窓から見える景色はまさに大自然に囲まれた田舎という感じです。 まぁシカゴもダウンタウンから離れれば広々とした田舎の景色ですが...。さて、道場に到着したものの日曜日ということでクラスは休みであり、先輩内弟子が用事を済ませると車で15分程離れた内弟子寮の方に案内されました。 この寮はベッドルームが3つもある一軒家で内弟子にはそれぞれ個室が与えられており、それがアラバマ道場内弟子の特典でもありました。アメリカに来て以来ずーっと道場暮らしの僕にとっては久々の人間らしい生活を取り戻す時間となりました。リビングルームには暖炉も広々とした庭もあり、日本の住宅と比べればとても恵まれた家ですが、もちろん内弟子達は『暖炉の近くに座ってコーヒーでも飲みながらゆっくり読書など』という時間はなかなか取れず、常に緊張の中で過ごしているような感じでした。 そして、そこから20分程車で走ったところには庭の芝がきれいに刈られ大きな家が建ち並ぶ区域があり、その一画に大山師範の邸宅がありました。 週末にそこで僕の歓迎会を開いてくれ、大山師範直々の味付けをしたステーキを食べさせていただきました。 ガーリックをばっちり使った味付けでビールがよく進んだのを思い出します。 師範曰く「極真会の松井館長が世界大会前稽古に来ていた時、このステーキを何枚かぺろーっと食べた」との事でした。

  さて、日々の内弟子稽古は、シカゴ道場とは幾分違ったメニューをこなしていましたが、残念な事に滞在途中で以前から痛めていた腰が悪化し充分にやりきる事が出来ませんでした。それでも極真の世界大会上位入賞し、齢40を過ぎても正道会館との試合で活躍したチャック先生に組手で胸を借りれたりと貴重な体験が出来ました。 因みに、チャック先生は組手で見せる顔とは裏腹に普段は花屋を経営し、ギター演奏をこよなく愛する物静かな方で、ひょっとしたら『世界最強の花屋では?』と僕等は冗談で言っていました...。(笑)

ある日、大山師範が内弟子寮に立ち寄った際に「大津!ちょっと腰を診せてみろ!」と云われ、それから1時間ほど汗だくになりながらマッサージをしてくださった事もあり、僕としては恐縮で仕方がありませんでした。一般社会でいうと新入社員が社長にマッサージをしてもらっているようなものです。 事前の噂から大山師範に対しては気難しいという先入観をもっていましたが、こんな対応をされると印象が変わってしまいました。 結局、腰痛が原因で1ヶ月の滞在を全う出来ずアラバマを離れる羽目になりました。

  最近はアラバマにも多くの日本企業が進出しており、以前とは比べものにならない程の日系人が住んでいるとは思いますが、僕自身あまり住んでみたいとは思いませんでした。 押忍

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