『山依山成山』February 7, 2008

 先月下旬に三重の伊勢神宮までひと走り行って来ました。 ちょうど出発の前日には名古屋周辺に雪が積るほど降った時で片道約500kmの道中は何も起こらないよう祈るばかりでした。 所沢を早朝5時に出発し、休憩を度々取りながらも昼頃には目的地に到着しましたが、その日は各地で突風が吹き荒れ、我々も四日市辺りから車が揺らぐほどの横風と戦いながら伊勢近くまで海沿いの立派なハイウェイを走り抜けた感じです。 神社に着けば、地元の人が『この冬一番』という冷たい風が容赦なく吹き付けて寒さが容赦なく襲って来ました。 久々にシカゴのダウンタウンにミシガン湖からの極寒の豪風を彷彿させられました。 こんな天候でも平日だというのに参道は人、人、人で溢れかえっていました。 そして、内宮の大きな鳥居をくぐり橋を渡ればそこは神秘的な世界で、正宮までの約1kmの道のりの両脇に立つ、樹齢何百年じゃなかろうかと思うような木々が風でうねりを上げ、尚一層の神秘さを醸し出していました。 そのあまりにも大きな雄叫びにもうすぐ3歳になる娘は『お化け〜!お化け〜!』と泣き出してしまい、家人には折れた大きな木の枝が頭上近くに落ち、あわやという状況でした。 『たしか本厄は僕のはずなんだけどなぁ〜?』

  その夜は、鳥羽まで足を延ばし宿で温泉を堪能しました。 場所柄、夕食に伊勢えびをはじめ魚介類が出てきたけど期待していたほどではありませんでした。最近、舌が贅沢になってきたのかなぁ〜? いや!讃岐に帰った時に必ず立ち寄る食堂のお造り(刺身)や焼き物、煮物の味を知ってる舌だからだろう〜? 何はともあれ至福のひとときを過ごし、翌日は昼近くに宿を発ち家路に向かいました。途中、東名を走りながらの富士山のあまりの美しさ、壮大さに感激し、以前友人から聞いた、その姿が一段と美しく見える河口湖周辺へ急遽行き先を変えました。 向かったのはいいのですが、雪がまだまだ残っており恐る恐るの運転でした。 そして、河口湖近くに着いた頃には薄暗くなり始め、ここで宿を取ることにしました。 僕自身は思いつきでふらっと旅をするのに慣れていて野宿もいとわないのですが、家人や子供達が一緒だとそういう訳にもいかず、以前には草津温泉に思いつきで行った時、どの宿も満室で夜中近くになってやっとの思いで見つけた24時間営業のサウナで過ごした思い出があります。 娘がまだ1歳なるかならないかの頃だったと思います。 その時は『旅にハプニングは付きもので、それに動じるようではいかん!』と訳の分からないイクスキューズをして家族を納得させました。 ただ、今回は運よく適当なホテルが見つかり、あてがわれた部屋からの眺めは下に河口湖、正面をみれば雪化粧をした富士が目に飛び込んでくるというまさに絶景でした。 大浴場に行けば、湯に浸かりながらその絶景が・・・露天風呂に移れば、その絶景を眺めながら首から下は暖かく顔は氷点下の世界。 しかも、シーズンオフの平日だったからか?他に客はおらず貸切状態の幸せなひとときを過ごせました。 

  富士山の姿を眺めながら、我が家の玄関の壁に掛けてある『山依山成山』と書かれた書を思い浮かべ、その一筆をいただいた、このコラムに何回も登場された小杭先生は、シカゴという場所柄『The wind blow, snow fall more and more, a mountain still sits as a mountain.』というふうに話されていたと思います。人生、多事多難に遭い己を見失いかけた時、心の奥深くに響きハッと何かを気づかせてくれるこの言葉、いや!むしろ順風満帆の時にこそ人は我を忘れ傲慢になりがちなのかも? こんな事を頭に思い浮かべながら、心地よい富士の夜は更けていきました。 風呂上りにはグラス一杯の白ワインをいただき深い眠りにつきました。   押忍

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