Sweat first, talk later!  March 14, 2009

 先日、三浦主席師範が来日して国際武道空手道連合の三回目となる講習会が東京武道館で行われました。参加させていただいた僕は空手着だけでなく下着までがびっしょりになった稽古をみっちりと三時間半してきました。最近は指導が中心になり、真夏でさえなければ汗が絞れる程の稽古をすることは久しく経験しておらず、一年に一回、仲間たちが集い緊張感を持って師範の稽古を受け、ばっちりと汗をかいた後はビールで乾杯! これ最高の至福なり!それと同時に内弟子をしていた頃の思いが頭に浮かんできました。毎日毎日、がむしゃらに稽古をして汗をばっちりかき、ふと窓の外を見れば同年代のカップルが楽しそうに過ごす光景に『うらやましいな〜!俺は何をやってんだろう?』と思った経験は一度や二度ではなかったと記憶しています。そんな時、当時ニューヨークの証券取引所で何ミリオン?いや何ビリオン?かもしれない額を取引していた先輩にあたる山中先生から、よく励ましの電話をいただきました。世界金融の中心であるウォール街の第一線で働き、誰もが羨むと思っていた先輩曰く『毎日稽古ができ、ばっちり汗を流せているヒデが羨ましいよ!』と。その頃は『え〜!そんな事ないだろう?』と思い、僕はそんな先輩の気持ちを理解する事ができませんでしたが、昨今何となくその気持ちが分かるようになってきました。案外、何びとも今の自分がいるpositionに満足せず、自分と違った立場にいる人を多少たりとも羨ましく思う生き物なのかも?  

  さて、山中先輩は武勇伝も多く、いくつもの苦労を乗り越え当時のpositionに辿り着いたのですが、その原動力は渡米後に経験したある悔しさが自分を奮い立たせたと聞いた事があったような...?渡米してしばらく経ったある日、マクドナルドに行き何かを注文したけどなかなか通じず、やっと分ってもらえたと思ったら違った物を出され、その悔しさが忘れられなかったと。今ではnative並みの英語を話し、Chicagoan(シカゴで生まれ育った人)と結婚され、お嬢様二人もハイスクールかカレッジに通うくらいの年ごろになられたと思います。 先日の講習会にも師範と一緒に来日され、稽古で汗を流されていました。齢50を超えられたという事でしたが、未だ以前の豪快さ失っていませんでした。 

 悔しい思いをした経験は、時として自分を向上させるのに役立つものです。恥かしさ、悔しい思いを時々思い出し、自分を奮い立たせてほしいものだと思います。ただ、昨今よく耳にするのは、そういった思いが逆恨みや妬みとなり自己中心的な考えで事件を起こす輩が増えているという事です。

  ここで僕の身近な経験をひとつ。25, 6歳の頃、アトランタであった試合でオランダから来た選手に左廻し蹴り一発でノックアウトされ聴衆の前でしばらく気を失ったあの悔しさを常に胸のどこかに秘め、稽古に励んだ結果、その後の数々の大会でチャンピオンになれたのだと思っています。あの時は、主審が大山泰彦師範で僕のconermanには廣瀬先生がついてくれていたように記憶しています。今でも思い出すのは、意識がもうろうとしている僕に大山師範が色々質問してきます。「今日は何曜日だ?」「オース!???」「今なにしてたんだ?」「オース!???」なかなか頭に返事が浮かんできません。 ただ、「ここはどこだ?」と聞かれた時は咄嗟に「オス!アラバマであります。おっ!いや!アトランタであります。失礼しました。」と応え、大山師範が微笑されていた記憶があります。その当時はアトランタオリンピックを1, 2年後に控え、町が活気づいており、大会後のパーティも高級レストランで催されましたが、僕はアゴが痛くて口が空けれず、おいしそうな料理を一切食べれず非常に悔しい思いをしました。 

  結局、何が言いたいかというと、能書きばかりが先走しりせず、自らが動き汗を流し、実践を通して己を磨けという事。 その原動力となり得るのは往々にして自らが体験した悔しさ、自分自身の持つコンプレックスであるという事。   押忍 

inserted by FC2 system