必死の力、必死の心  September 04, 2011

 ふと 『最近、必死の心、必死の力を以って取り組んでいる事が何かあるかなぁ〜?』という思いにふけりながら、心に浮かび上がったある思い出を書きたいと思います。 『必死』とは、読んで字のごとく単なる一生懸命ではなく、『まさに命がけでやり遂げる』という覚悟を持った行動の事です。 はて、皆さんに『一生懸命』と『必死』の違いが伝わったでしょうか?

  私が大山倍達総裁の内弟子をしていた頃、 『君ィ〜!それが出来ないとね! 明日から飯が食えない、そう思え!』とか 『それが出来ないんだったら、君ィ!腹を切らなければいけない、そう思え!』と何事においても『必死』で向き合うように私たち内弟子だけでなく名だたる大先輩たちに対しても叱咤激励をされていました。 

  僕が内弟子一年目だったある日、大山総裁が出先からの電話で『XX寮長は居るかね?』と尋ねられました。その時、その寮長はたまの休みを利用して映画を観に池袋の繁華街へ繰り出しており、総本部には不在でした。電話に出た内弟子が 『押忍! XX先輩は外出中であります。』と返答すると『また後で掛けなおすよ』との言葉と共に電話は切れてしまいました。さぁ〜 それからが大変です。当時、携帯電話など無くポケットベルさえも世に出ていない時代です。直ぐに若獅子寮の大部屋で次の稽古に向けて英気を養っていた我々一年目の内弟子に徴集がかけられ、21組になって池袋じゅうをくまなく探せとの命。ついでに『見つかるまで帰ってくるな!』との一言も付け加えられました。そうは言われたものの僕は数か月前に香川から出て来てやっと総本部周辺の道を覚え始めたばかりの田舎者。一方、一緒に組んだAクンも東北のある県から来た地方出身者で東京は初心者でした。ただ、当時の雰囲気として指示を出す先輩に『繁華街にはどう行ったらいいですか?』とか『映画館はどの辺りにありますか?』などと尋ねられる空気ではありませんでした。とにかく総本部を飛び出して行くしかありません。しかも、その日は雨模様にもかかわらず傘をさす事などままならず、先輩から見える区間は全速力です。格好といえば、坊主頭に上下『極真会』の刺繍入りジャージと健康サンダル。その上、人通りが多いサンシャインビル辺りに着いた頃には全身びしょ濡れ状態になり、通りは人、人、人で大変混雑していましたが、行き交う人たちはみんな僕たちの為に大きく道を空けてくれました。服装が服装だし、顔も必死の血相で多分どこかの刑務所から脱走してきた囚人ぐらいに思われたのかもしれません。さて、あの時のなりふり構わぬ『必死の気持ち』未だ持ち合わせているだろうか? 

 成長に伴い洗練されていく事は必要不可欠であると思いますが、それと共に『必要以上のプライドが芽生え、必要以上に恰好をつけるようになり、必要以上に世間体を気にしながら行動していないか?』と自分に問い掛けた、つかの間のコーヒーブレイクでした。  我が家にて、あしからず。  押忍

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