シカゴでのなが〜い夜 完結編 

三浦師範が道場に来られ昨夜の出来事を報告すると「馬鹿!」と一言だけで、その後は一切お咎めなしでした。ホッと一息すると同時に『意外と師範は優しいかも?』と感じました。ただ、師範が先輩を迎えに行こうにも僕からの情報では警察署の場所さえはっきりせず道場で待つしかありませんでした。僕といえば、いつも通りの自主トレをこなそうとしますがなかなか集中できずボーっとしていると、先輩がひょっこりと帰って来られ、その姿に師範も無事だったことを喜びました。さぁ〜今後の対策に先ずは裁判に備え弁護士が必要ですが、それは師範の教え子から選びました。しかし、彼もBusinessなので当時DUI (Drunk under influence:飲酒運転)ケースで大体2000ドル (300,000) の請求をしていたと思います。それに加えて罰金が1500ドルほど (200,000)で合計3500ドル (500,000円)は必要と見積もりました。その罰金を弁護士の手腕でどれだけ下げられ、免停も免除してもらえるかという話になります。そこで思い出すのが、以前 NFLのスーパースター O. J. Simpsonが妻殺しの容疑者として逮捕され裁判になった際、大金をはたいて最高の弁護士たちを揃え無罪を勝ち取った記憶です。殆どのアメリカ人は彼がやったに間違いないと思っているようでしたが…?この例のように金持ちであれば良い弁護士を使って判決を有利に出来るというのは考えものですが、これが実情であり未だこの事件は解決していないのでは? 近い将来、日本でも陪審員制度が始まるようですが、日本人社会に合致しているのかは疑問です。決してアメリカのシステムだけを真似ることがないよう願いたいものです。因みにシカゴに住んでいたとき2回ほど陪審員の通知を受け取りましたが、その都度、僕の英語力では判決を判断するには足りないという理由を付け辞退しました。(このJury制度は義務になっており、選ばれれば明確な理由なしに欠席することは許されず、仕事などは理由になりませんでした。)

いつものごとく話が逸れましたが、先輩に関しては弁護士の力不足なのか?総額で3000ドル(約450,000円)ほどの支出が必要になり、免停もしっかりついてきました。内弟子生活ではそんな大金を用意できず、先輩は何日も考えた挙句、内弟子を辞め働き始めることを師範に申し出ました。師範は、せっかく頑張っているのだからお金のことは心配せず内弟子を続けるよう説得しましたが先輩の意思は強く、しばらくは道場に寝泊りし働きながら稽古をするという話でしたが、やはりストイックな生活を続けることは難しかったようで...? 1ヶ月程過ぎた頃には僕一人になってしまいました。それからというもの、夜のクラスが終わって師範が家に帰れば道場にポツンと僕一人になってしまいました。異国の地でシーンと静まり返った住宅街の一角にある道場。 最初の1, 2ヶ月は毎晩のようにいたたまれない孤独感が押し寄せ日本での生活を恋しく思うばかりの日々でした。「早く日本に帰りた〜い!」いつも心の中で叫んでいたような...。 ちょうど巷はクリスマスシーズンで家族、恋人同士が楽しそうにクリスマスショッピングやバケーションのことを話題にしています。それも手伝ってか?寂しさは深まる一方でした。唯一、寂しさを忘れられたのは、がむしゃらに稽古をしている時だけでした。     押忍
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